
賃貸に住んでいた親族が亡くなったとき、遺品整理には他にはない事情がひとつ加わります。家賃は、片付けが終わるまでではなく、契約が終わるまで発生し続けるということです。だから最初にやるべきは荷物を運び出すことではなく、①賃貸借契約書を探す、②管理会社か大家さんに連絡する、③解約日を決める、の三つ。解約日が決まって初めて、片付けの日程を逆算できます。ただし相続放棄を考えている場合は、荷物に手を付ける前に確認すべきことがあります。
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一軒家の遺品整理なら、極端に言えば何か月かけても構いません。ところが賃貸は違います。荷物が一つも残っていなくても、解約の手続きが済んでいなければ家賃は発生し続けます。逆に言えば、解約日が決まらないうちは、いくら急いで運び出しても出費は止まらないということです。
私たちが岡山市内・倉敷市内のワンルームやアパートに伺うご依頼でも、いちばん多い後悔がここです。「先に荷物を出してから連絡しようと思っていたら、一か月分よけいに払うことになった」。順序が逆なのです。
「解約は1か月前に伝えるもの」と言われることがありますが、これは契約によって異なります。2か月前と定めている物件も、日割り精算の扱いが違う物件もあります。期間も精算方法も、賃貸借契約書に書かれている内容が基準です。ネット上の一般論ではなく、必ず手元の契約書を確認してください。
また、借主が亡くなった場合の契約の扱い(誰が解約手続きをするのか、必要書類は何か)は物件や管理会社によって運用が異なります。ここは自己判断せず、管理会社に「借主が亡くなったのですが、解約の手続きはどう進めればよいですか」と率直に尋ねるのがいちばん早い方法です。
部屋に入ったら、まず書類を探します。優先順位は次のとおりです。
これらは玄関の下駄箱の上、テレビ台の引き出し、仏壇の脇といった「郵便物を置く場所」にまとまっていることが多いものです。見つからない場合でも、管理会社に問い合わせれば契約内容は確認できます。
最優先です。連絡するときに伝える内容を整理しておくと、話が一度で進みます。
片付け作業中は照明と換気が要りますし、水も使います。作業が終わるまでは止めないのが原則です。停止の連絡は、退去日が確定してから、退去日に合わせて行います。手続きの方法や必要書類は各社で異なるため、検針票に記載の連絡先で確認してください。
退去後も、その住所には郵便物が届き続けます。日本郵便株式会社が案内している「転居・転送サービス」は、同社サイトの説明では「お引越しの際、お近くの郵便局窓口、ポスト投函、e転居(Webサイト、郵便局アプリ)から転居届を提出いただくことで、1年間、旧住所あての郵便物等を新住所に無料で転送します」という制度です。
注意点として、同ページには次のように書かれています。
この制度はあくまで「引越し」を前提としたものです。亡くなった方あての郵便物の扱いをどうするかは、届出の可否も含めて郵便局の窓口でご確認ください。ここを自己判断で進めると、届くはずの重要書類が届かなくなる可能性があります。
賃貸の遺品整理で最も慎重になるべき論点です。急いでいるからこそ、ここだけは飛ばさないでください。
e-Gov法令検索「民法」の第921条(法定単純承認)は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」には「単純承認をしたものとみなす」と定めています。単純承認について裁判所は「相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ」ものと説明しています。
つまり、退去期限に追われて家財を処分した結果、相続放棄ができなくなる可能性があるということです。故人に借金や滞納家賃があるかどうか分からない段階では、この判断は非常に重くなります。
期限についても押さえておいてください。裁判所ウェブサイト「相続の放棄の申述」のページには、「申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならないと定められています」とあります。同時に、3か月以内に調査してもなお判断材料が得られない場合には、「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てにより,家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます」とも記載されています。
退去期限と3か月の期限がぶつかったときは、自己判断で片付けを進めないでください。この場合は、家財の処分だけでなく解約手続きそのものを誰がどう進めるかも含めて、弁護士・司法書士などの専門家、または家庭裁判所の手続案内に早めにご相談ください。管理会社にも「相続の方針を確認中である」と伝えておくと、話が進めやすくなります。「片付けてしまってから相談する」と、取り返しがつかないことがあります。
なお、部屋がゴミ屋敷化しているケースは論点が変わります。その場合は賃貸ゴミ屋敷の退去費用と原状回復|間に合わないときの対処法をご覧ください。
相続の方針が固まり、退去日が決まったら、そこから逆算して片付けの日程を組みます。ここで岡山県内の実情を知っておかないと、計画が崩れます。
岡山市公式ホームページ「粗大ごみの出し方」には、次の記載があります。
二つ目が決定的です。1回の収集が完了しないと、次の申し込みができない。ワンルームでも、ベッド・机・本棚・カラーボックスと粗大ごみは何点も出ます。それを1回ずつ順番に処理していくと、退去期限に到底間に合いません。
三つ目も見落とされがちです。ご遺族が初めて申し込む場合、過去に戸別収集を利用した実績がないためインターネットからは申し込めず、電話(受付時間は月曜から金曜の午前9時から午後4時)に限られます。県外にお住まいのご遺族が平日の日中に電話をかけ続けるのは、それ自体がかなりの負担です。
倉敷市ホームページ「粗大ごみ戸別収集のお申し込み」には、「地区により収集日が決まっていますので、遅くとも7日前までには申し込みを行って下さい」と記載されています。受付時間は「月曜日から金曜日、各日9時~17時(土曜日・日曜日、年末年始は休み)」。インターネット申し込みについても「過去に戸別収集を利用した方であれば、インターネットから申し込めます」とされており、岡山市と同様に初回は電話が必要です。
割れ物の扱いも見落とせません。倉敷市ホームページ「燃やせるごみ・資源ごみ・埋立ごみ・使用済乾電池」では、埋立ごみを「18リットル缶より小さくて袋に入る程度の燃やせないもの:月1回収集」とし、例として「陶磁器類(植木鉢、茶碗、湯呑、皿など)、耐熱ガラス、クリスタルガラス、鏡、使い捨てカイロ、乾燥剤、ガラスコップ、LED、白熱電球」を挙げています。岡山市側も同様で、公式ホームページには「不燃ごみは月1回収集していますが、お住まいの地域によって収集日は異なります」とあります。食器やガラス製品は、この月1回のタイミングを逃すと次は約一か月後です。
結論:退去期限が1か月を切っている賃貸の遺品整理は、自治体回収を主軸に据えると破綻します。自治体回収は「日程に余裕があるとき」の選択肢です。締切が先にあるなら、許可を持つ業者に一括で依頼するほうが、結果として家賃の二重負担を防げます。なお、粗大ごみの手数料は品目やサイズによって異なるうえ改定もあり得るため、金額は各市の最新の公式情報でご確認ください。
岡山市の粗大ごみの手順そのものは岡山市の粗大ごみの出し方|申し込みから回収までの流れを解説で詳しく解説しています。
退去時にもう一つ心配になるのが原状回復です。国土交通省ウェブサイトで公開されている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、原状回復を次のように定義しています。
「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
同ガイドラインは建物の損耗等を三つに区分しています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ①-A | 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化) |
| ①-B | 賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗) |
| ② | 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等 |
そして「本ガイドラインのポイント」には、「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし」と書かれています。同ガイドラインは通常損耗の具体例として畳の日焼け等を挙げており、生活していれば当然生じるものまで元通りにする義務がある、という前提ではないわけです。
ここは正確に理解しておく必要があります。同ガイドラインの「本ガイドラインの位置づけ」には、次のように明記されています。
「その使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法等については、最終的には契約内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきものであると考えられる」
つまりガイドラインは「一般的な基準」であって、最終的な負担区分は契約内容と部屋の実際の状態で決まります。具体的にどこまで負担するかは、契約書の特約と管理会社との協議次第です。この記事で「ここは払わなくていい」と断定することはできませんし、してはいけません。精算内容に納得できない場合は、お住まいの自治体の消費生活センター等にご相談ください。
退去期限がある以上、業者への依頼は現実的な選択肢です。ただし急いでいるときほど、確認を省いてはいけません。
国民生活センターのウェブサイトで2018年7月19日に公表された「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」では、消費者へのアドバイスとして次の点が挙げられています。
相談事例には「作業時に予定外の料金を請求され、最終的に見積金額の2倍の費用を請求された」「処分しないようにと頼んだ物を勝手に処分された」といったものが挙げられています。
岡山市も、公式ホームページ「一時大量ごみの収集・処分及び遺品整理が対応可能な許可業者について」で、「岡山市は、業者の紹介・あっせんなどは行っておりません」としたうえで、「見積は、同一条件のもと、複数業者へ依頼することをお勧めします。また、見積りが有料の場合もありますので、ご注意ください」と案内しています。同ページでは、遺品整理に対応できる一般廃棄物収集運搬許可業者の一覧が公開されており、依頼先が許可を持っているかどうかはご自身で確かめられます。急いでいるときこそ、この一手間が効きます。
立ち会いが難しい場合の進め方は遠方に住む家族の遺品整理|立ち会えないときの進め方と依頼のコツにまとめています。
ここまでの内容を、実際の時間軸に並べ直します。退去日が決まっている前提で、逆算するとこうなります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退去1か月前 | 賃貸借契約書を探す/管理会社・大家さんに連絡/解約日を決める/相続の方針を確認する |
| 3週間前 | 残す物・処分する物を仕分ける/貴重品と重要書類を回収する/業者に見積りを依頼する(複数社) |
| 2週間前 | 作業日を確定する/自治体回収を使う分があれば、この時点で申し込みを済ませる |
| 1週間前 | 搬出作業/室内の状態を写真に残しておく |
| 退去日 | 立ち会い・鍵の返却/電気・ガス・水道の停止/郵便の扱いを郵便局で確認する |
▶ 写真は必ず撮っておく
搬出が終わった直後の空室の状態は、あとから証明できません。壁・床・水回りを含めて部屋全体を撮っておくと、退去時の精算で認識がずれたときに話し合いの材料になります。スマートフォンで十分です。日付が残る設定にしておいてください。
▶ 鍵の本数を最初に数える
意外に多いのが、鍵の本数が合わずに返却で止まるケースです。故人が合鍵を作っていたり、家族が1本持っていたりします。最初の連絡の時点で「何本預かっているか」を伝えておくと、退去日にあわてずに済みます。
コウノ産業は岡山県全域で不用品回収・ゴミ屋敷片付け・遺品整理を承っています。退去期限のある賃貸物件では、次のような対応が可能です。
受付は朝8時から夜8時まで年中無休です。県外にお住まいで平日日中に動けない方も、まずはお電話かLINEでご相談ください。現地の状況確認から承ります。
出典:国土交通省ウェブサイト「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」/e-Gov法令検索「民法」/裁判所ウェブサイト「相続の放棄の申述」/国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日公表)/岡山市公式ホームページ「粗大ごみの出し方」/岡山市公式ホームページ「一時大量ごみの収集・処分及び遺品整理が対応可能な許可業者について」/倉敷市ホームページ「粗大ごみ戸別収集のお申し込み」/日本郵便株式会社「転居・転送サービス」。本記事では、これらの内容を要約・編集して紹介しています。
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